編集は料理

録音を研究してみて
最近やっと色々
分かってきた気がします。

普通ならフラメンコギター
と言うのは
ギターそのものの音色が美しく
響くように作られているし、
その美しい響きを空間も含めて
楽しむものだと思うんです。
つまり部屋の反射音も一緒に
楽しむものだと思うんです。
でも、録音と言うのはそこが
違うんじゃないのかな、
と思いました。

ギターの
自然な美しい響きを殺したくない、
と思って
色々試したりしたけど、
多分デッドな状態にした方が
良いんです。
リアルと録音と違うのは、
録音では音が散らばると
耳が迷う気がするんです。
跳ね返り具合とかで
どんな空間なのかを
耳が認識するとしたら、
録音で耳だけの情報で
しかも音が拡散して
散らばっていると
耳が迷ってしまう気がします。
だから、音を吸収したりして
一旦音の位置を定めてしまって、
「ここら辺を聴いててくださいね」
と言う状態にしてしまうんじゃ
ないのかな、と言うのが
今の僕の認識です。

でも音を吸収して殺してしまったら
せっかくのギターの響きが
台無しになるんじゃないのか?
と思うじゃないですか。
ここの認識が今まで理解
出来てなかったと言うか
何となく抵抗があった所で、
天然のリバーブ成分が
消えて良いのかどうなのか?
と言うのが疑問でした。
100人いたら100人とも
ギターの響きなんて
殺したらいけない!
って言うと思うんですよね。
でも録音の場合は
その響きを後から編集で
リバーブとか使って
コントロールするんだと思います。
人工調味料みたいだけどね。
だから料理みたいな感じかな?

例えば
「素材そのものが美味しいんだから
そのまま食べた方が良いんだ!」
と言う感じと
「いや、料理したら
もっと食べやすくしたり
美味しく出来る!」
みたいな感覚に
似てるのかも知れない。
大体編集しちゃう時点で
「ここ間違えたから録り直そう」とか
「こっちの耳からこの音が
聞こえるようにしよう」とか
「低音の不要な成分を切ろう」とか、
もうかなり作為的で
人工的なんですよね。

それか、
徹底的に反響音を
コントロールして
美しく響かせられたら
それを録音する事も
出来るかもしれない。
良いホールやスタジオとかで。
でも、多重録音の場合は
それが上手くいくかは分かりません。
本当にライブ録音一発録りで
ギター一本で
編集もしないなら
それで良いかも知れません。

どっちにしろそれを
マイクで録音するわけで、
そのマイクの性能にも
音は左右されます。
このマイクにも丸い音、細い音、キンキンする音、とかあるから
もうそれってギターの音と言うか
マイクの音なんじゃないの?
って気がします。

結局は生の音に勝るものは
ないと思います。
これだけはどんなに世の中が
進歩しても変わらないでしょうね。
AIにもどうにも出来ないと思います。